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子どものヘディングを正しく理解しよう!日本のサッカー協会のガイドラインと年代別の練習方法

サッカーの中で大切な技術の1つである「ヘディング」

2024年現在では過去の価値観がアップデートされて、子どものヘディングを禁止している国があるのはご存知でしょうか?

こちらのコラムでは、ヘディングに関する世正しい理解と、JFAのガイドラインを簡単に説明します。

子どもの将来に関わるとても大切なことなので、ぜひ最後までチェックしましょう。

子どもはヘディングをしてはいけない?


昨今では、子ども時代のヘディングは危険視されていて、欧米諸国でも規制をかけるようになってきました。

2020年にはサッカーの発祥国であるイギリスが、11歳以下のヘディング練習を禁止する規定を作りました。

また、アメリカは先んじて2016年から子どものヘディング練習を禁止しています。

いずれも、ヘディングによる頭部への刺激、それに伴う脳震盪などの異常を懸念してのことです。

また、相手選手との競り合いの中で、頭部同士が接触したり、着地の際に受け身が取れなくなってしまうことも、怪我に繋がる原因だとして、ヘディングを敬遠する要因になっています。

とある研究結果では、ヘディングを多くしている選手は、脳神経や感覚に異常をきたす割合が増えるとされています。

しかし、そういったリスクに対する科学的な根拠は一切ないことも事実です。

こういった現状も踏まえて、日本のサッカー協会JFAのスタンスについて解説しましょう。

JFA(日本サッカー協会)のガイドライン

前章で説明したような世界の情勢を受けて、2021年にJFAは「育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン」を発表しました。

JFAの方針の一部を抜粋します。

ヘディングに関わるリスクを避けるために、「禁止」するのではなく、「正しく恐れ」より適切な方法によるヘ ディングの習得を目指す。子どものサッカーにおいて、ヘディングの頻度は低く、ゲームでの最重要の要素ではないが、安全の観点も含めて正しい技術の習得が将来に向けて必要である。またコーディネーションの発達、技術習得の観点から、幼児期からヘディング習得のためのトレーニングや指導は必要である。そこで、安全に、脳へのダメージが小さい強度・方法で、幼児期より段階的にヘディングを習得するガイドラインを作成する。
[JFA 育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン (幼児期~U-15)より抜粋:https://www.jfa.jp/coach/pdf/heading_guidelines.pdf]

とあります。

つまりJFAとしては、「完全に禁止はしないが、年代に応じた段階的な練習が必要である」というスタンスです。

今後も科学的な検証や医学的な見地を参考にしつつ、ヘディングに対する方針をアップデートしていくとのことです。

年代別の正しいヘディング練習法


では、先ほど説明したJFAのガイドラインに沿って、年代別のヘディングの練習方法について紹介します。[JFA 育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン (幼児期~U-15)より抜粋:https://www.jfa.jp/coach/pdf/heading_guidelines.pdf]

幼児期

現状:
直接的にヘディングの技術を指導することはほとんどない。また、この年代のゲームの中でヘディングを意図的に行う状況は見られない。

指針:
額でボールを触る経験、空中のボールを手で操作する(キャッチなど)ハンド・アイ・コーディネーションを高めることが大切である。風船や新聞ボールなどの軽量のボールを額に当ててみたり、額にボールを乗せてみたりといった課題は、子どもの興味を引くものであり、空間把握や距離感の向上のためにも欠かせない要素である。

課題の例
・風船を自分で投げ上げて落とさないようにキャッチ
・落ちてきた風船をからだのいろんなところに当ててみる
・風船を地面に落ちないように手や足などに連続して当ててみる(風船つきの要領)
・新聞ボールを上に投げてみる、できればキャッチ
・軽量ボールを額に乗せてみる、おうちの人などと額ではさんでみる

幼児期はヘディングをすることは無く、練習をする必要もありません。

ただ、空中にあるボールを捉える感覚、額にボールが当たる感覚を養うと今後の力になることでしょう。

くれぐれも、固く重たいボールを頭に当てないようにしましょう。

小学校1,2年生

現状:
トレーニングでヘディングの技術を特別に指導されることはほとんどない。この年代のゲームの多くがスモールサイドゲーム(少人数で狭いエリアでのゲーム)であり、ゲームの中でヘディングを意図的に行う状況は見られない。

指針:
風船や新聞ボール、軽量ボールなどを使用して空間を移動するボールに身体を合わせる運動の経験を多くする。トレーニングというよりも遊び感覚での実施が望ましい。その中に徐々に額でボールに触れる機会を作る。

課題の例:
・風船を使って、落とさないようにキャッチ、額に当てる
・軽量ボールを自分で上に投げてアンダーハンドでキャッチ、頭の上でキャッチ軽量ゴムボール※+ボールネット 額に当てる練習
・軽量ゴムボール※+ボールネットを自分でゆらして額に当てる 10 回程度
・軽量ゴムボール※+ボールネットを人にゆらしてもらい額に当てる 10 回程度
・軽量ゴムボール※+ボールネットを連続して額に当てる 10 回程度
※ 軽量ゴムボール 100 円均一ショップ等で購入可能なボール(パールボール、カラーボール)

この年代もヘディングをすることはほぼあり得ませんが、少しずつ額でボールを扱うことに慣れると良いでしょう。

ヘディングの練習というよりは、柔らかいボールを使った遊びのようなものだと捉えましょう。

小学校3,4年生

現状:
トレーニングでヘディングの技術練習が徐々に導入されてくる。4号球でのヘディングはこの年代では負荷が大きい。5 人制などのスモールサイドゲームでは、ヘディングの機会はほとんどない。しかし、8人制のゲーム形式では、ゴールキーパーからのキックやクリアーボールの処理のためにヘディングをする機会が出てくる。

指針:
キャッチボールなどの空間のボールを主に手でプレーする運動経験を十分に行うことが大切。また、軽量ボールなどを使用して正しいヘディング技術の習得の導入をおこなう。「ボールをインパクトの瞬間まで見ること」「額でボールをインパクトする」といった基本的な技術を理解させる。ただし、4 号球でのヘディングの反復はおこなわない。 また、相手と競り合うためのコーディネーションを高める必要がある。2 人で同時にジャンプしたり、 空中のボールを手で取り合うといった運動を取り入れていく。5 人制などのスモールサイドゲームを中心にすること を推奨する。

課題の例:
・100 円均一ショップ等で購入できるボールを使って、キャッチボール、フライボールをキャッチ
・軽量ボール(バレーボール等)+ボールネット ヘディング練習
・自分でゆらして額に当てる 10回程度
・高さ変えてジャンプヘディング 10回程度軽量ボール
・額部分でキャッチ バウンドさせて額に当てる
・バウンドさせてヘディングしてみる

ヘディングをする機会が少しずつ増えていきますが、過度な練習は絶対に避けましょう。

柔らかいボールを使う、回数の制限をする、などの工夫をして頭部への負担を減らすように心がけましょう。

小学校5,6年生

現状:
基本的には 8 人制のゲーム形式であり、ゲーム中に空中戦の状況が生まれる。ただし成人の試合に比べ るとその数は少ない。ヘディングの技術レベルや運動能力に個人差があり、ヘディングの巧拙がはっきりし始め る。

指針:
引き続き、空中にあるボールを手でプレーすることを中心に、二人で同時にジャンプしたり、空中のボー ルを手で取り合うといった運動をおこなう。徐々に 4 号球を使ったヘディングを導入するが、頭部への負荷(衝 撃と頻度/量)を考慮して実施する。

課題の例:
・テニスボールを使ってキャッチボール、フライボールをキャッチ 4 号球+ボールネット
・自分でゆらして額に当てる 10 回程度
・高さ変えてジャンプヘディング 10 回程度
・4 号球を使って額でキャッチ
・バウンドさせて額に当てるバウンドさせてヘディング

3,4年生以上にヘディングをする機会が増えることでしょう。

また、子どもによって体格差も生まれてくるので、空中での体の使い方や相手との競り合いの技術も必要となってきます。

引き続き、回数の制限を加えつつ、無理のない程度に練習をすることが推奨されます。

中学生

現状:
使用球のほとんどが5号球に移行する。従って中学1年生での負荷に注意が必要である。筋力がついてくるので、ヘディングの強さも大きくなる。同時に競り合いでの強度も大きくなると考えられる。

指針:
軽量ボールや4号球を使って正しいヘディング技術習得ための反復を頭部への負荷を考慮して実施する。相手との正当な競り合いができるようなトレーニングも積極的に導入する。体幹の安定、首回りの強化といった 基礎体力強化も導入する。

課題の例:
・テニスボール キャッチボール、フライをジャンプしてキャッチ
・軽量ボール 自分で投げ上げて、ジャンプして最高到達点でキャッチ
・(4 号球) 相手の投げたボールをジャンプして最高到達点でキャッチ
→ヘディングでリフティング 10 回くらい
・首のアイソメトリック(ストレッチ) 前後左右
・コアトレーニング
→フロントブリッジ、サイドブリッジ、バックブリッジ 10 秒くらい
・5 号球 相手が下から投げたボールをヘディング 10 回くらい
・(4 号球)相手が下から投げたボールをジャンプヘディング 10 回くらい

使用球が大きく重くなり、より衝撃が強くなり、ヘディングをする機会も増えます。

実践的なヘディングの練習が必要であるとともに、首周り、背筋、足腰の筋肉強化も重要となることでしょう。

とはいえ、無制限にヘディング練習をすることはやめましょう。

まとめ

子どもの頃のヘディングは科学的根拠が乏しいとはいえ、危険視されていることも事実です。

世界的に子どものヘディングを禁止する動きがありますが、日本はヘディングを「正しく恐れる」ことを方針としています。

こちらで紹介した練習方法や指針を参考にしながら、子どもの安全を守りながら練習をしましょう。

そして、正しい順序と方法でヘディングの技術を身につけ、試合で活躍しましょう!

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